GRUS-3 開発者インタビュー vol.2
2026年に打ち上げ予定の小型衛星GRUS-3(グルーススリー)は、地球上のあらゆる地点を高頻度かつ広範囲に観測できる地球観測衛星です。世界中の多くの人たちが宇宙からの視点を得て、さまざまな国や産業での地球観測データ利用を加速させていきます。
GRUS-3の開発は7機を同時に製造し、試験をして、打ち上げるという、アクセルスペースにとって前例のない挑戦です。GRUS-3の開発をまとめる衛星開発マネジャーの杉本さんに、その開発現場を聞きました。
ー 衛星7機を同時開発する現場とは?
7機は、アクセルスペースが同時開発した最多の機数です。コンポーネント(部品)の調達、製造、組み立て、衛星試験、ロケットを打ち上げる射場への出荷準備、そして運用の準備まで、全ての段階を並行して進めています。
全ての機体がお客様にデータを届けるための大切な衛星なので、7機あるからといって「まあ1機くらい」とは絶対になりません。
打ち上げ時期は決まっており、品質を優先しすぎると納期を逃し、納期を優先しすぎると品質で諦める部分が出てしまいます。品質と納期を両立させるため、妥協しない部分を明確にしながら日々の判断を積み重ねてきました。
着実に前進してこられたのは、製造の各段階で活躍するエンジニアの協力があってこそだと思っています。
- 開発は順調に進みましたか?
もちろん、うまくいったことばかりではありません。試験で想定外の数値が出ることもありました。
1機に懸念点が見つかると、その原因調査を進めると同時に「他の6機にも影響するか、この1機だけか」ということにも非常に気を遣います。すでに工程が進んでいる他の号機で同じ懸念点が発生する場合、工程に多大な影響を与えかねないからです。
そのため、他の6機にも同様の事象がないかを迅速に確認し、影響を最小限にするように段取りしつつ、懸念点を解消してきました。
メンバーが自発的に課題解決
ー 衛星開発マネジャーとして果たした役割は?
プロジェクトのメンバーは、機械エンジニア、電気エンジニア、組み立てエンジニア、試験エンジニア、ソフトウェアエンジニア、運用エンジニアと、専門分野ごとに役割が分かれています。
打ち上げという絶対的な締め切りを守り、7機を製造し切るために、衛星開発マネジャーとしては、オーケストラの指揮者のように常に現場を見渡し、工程を円滑に回していくことに徹底しました。
ー メンバーとはどのように協力しましたか?
7機分の工程を回してこられたのは、私一人の力ではありません。現場のエンジニアが自ら課題を見つけ、解決しようと動いてくれました。
ある試験エンジニアは、属人化していた試験の実行について、誰でも実行可能なテストツールを開発してくれました。これにより、特定の人に負荷が集中することが避けられたり、テストの内容が均一化されたりしました。
また、ある機械エンジニアは、振動試験で得られる結果のデータ解析を自動化するツールを開発しました。これまではマニュアル作業だったため、振動試験の実施に1機あたり1週間ほど時間がかかっていたところ、2〜3日で実施できるようになりました。
こうした試験作業の効率化によって工程に余裕が生まれ、品質の確認や懸念点への対応に十分な時間を割くことができました。
GRUS-3の、その先を見据えて
- GRUS-3の設計の特徴を教えてください。
GRUS-3の特徴は、汎用衛星バスシステムを採用していることです。汎用衛星バスシステムは、衛星の基盤となる構造や機能を標準化し、異なるミッションで共通して使用できるシステムです。
衛星の中は2階建て構造になっており、1階部分がバスシステムです。2階部分にミッション機器が搭載されており、GRUS-3の場合は望遠鏡が入っています。
汎用衛星バスシステムの活用は、お客様のニーズに応じてミッションをカスタマイズしながらも、衛星の設計だけでなく、運用方法も共通化できるというメリットがあります。GRUS-3の設計は、今後、さまざまな用途での衛星利用に生かすことができます。
- 次の目標は?
衛星量産という未来は、より多くの衛星をより早く低コストで製造できることによって実現します。GRUS-3での7機同時開発の経験は、量産に向けた大きな一歩になりました。
量産が可能になれば、これまで衛星となじみのなかった人の手にも衛星が届くようになります。当社のビジョンとする「Space within Your Reach~宇宙を普通の場所に~」につながると考えています。
関連情報はこちら:
日本から飛び立つ鶴の群れ | 次世代地球観測衛星GRUS-3とは
品質を高め、納期を守る | 次世代地球観測衛星GRUS-3開発の流れ