小型衛星の開発と運用をベースに、アクセルスペースは宇宙があらゆる人に当たり前に使われる社会を目指して事業を展開しています。みなさんは「小型衛星」と聞いて何をイメージするでしょうか。衛星開発に日々取り組む私たちにとって当たり前のことも、多くの人にとってはそうではないのでは?そのような疑問から出発した今回の企画では、「分かるようで分からない小型衛星」について解説します。アクセルスペースの小型衛星を今よりもっと身近に感じてもらえますように―。
「小型衛星はどうやって地球を撮影するの?」が第2回のテーマです。
アクセルスペースは、宇宙から地球の情報を得るために地球観測用の小型衛星「GRUS-1(グルースワン)」を運用しています。衛星に搭載したデジタルカメラ(光学センサー)が撮影した画像を基に、植物の分布や森林伐採、地形、土地利用の現状や変化などの情報をお客様に提供しています。
当社で衛星の撮影機器の技術や性能管理に携わる丹波さんと、お客様の事業に役立つ情報を提供するために衛星画像の解析・処理をしている中野さんに話を聞きました。
ー 小型衛星はどんな環境にいるの?
丹波:小型衛星GRUS-1は、地球の高度585㎞を秒速7kmで回っています。そんな速さで動いていてどのように静止した画を撮るのかと不思議に思うかもしれません。
衛星に人が乗っているとしたら、飛行機に乗っている感覚に近いです。飛行機はとても速いスピードで飛んでいるけれど、飛行機の中の人はその速さを感じませんよね。
衛星から地球まで585㎞、おおよそ東京から青森までと同じ距離です。これだけ離れているので、衛星のカメラを通した地球は、飛行機の窓から地表を見た時のように、ゆっくり動いて見えます。また、宇宙空間には大気がほとんどないため、衛星に揺れはなく、カメラは安定した状態で地球を捉えることができるのです。
ー 衛星にはどんなカメラが搭載されている?
丹波:量販店に並んでいるようなデジタルカメラの一つ一つの部品を衛星用にカスタマイズしています。宇宙といっても遠い存在ではなく、意外と身近な技術が使われていますよ。GRUS-1が撮影する画像の細かさは中分解能と呼ばれ、空港に並ぶ航空機の種類を識別できるほど鮮明です。その細かさは、望遠鏡や搭載する衛星の大きさによって変わります。
中野:GRUS-1の撮影画像は幅55㎞、長さは最長1000㎞です。これだけ広域なのは、衛星が特定の地点に的を絞りながら連続撮影しており、その画像をつなげて1枚の画像にしているからです。この仕組みは、スマートフォンのカメラのパノラマ撮影が、スマホ画面のガイド線に沿って連続撮影された写真をつなぎ合わせていることに似ています。
当社の場合、複数画像を単純につなぎ合わせるだけでなく、地球を真上から見た画像になるよう、撮影された地形に地図の情報を重ねてゆがみがないように補正をしています。例えば、山が倒れて見えたり、まっすぐな道路が曲がって見えたりしないように、といったことです。また、大気の状況によって異なって写る色調を補正する処理もしています。
ー シャッターはどうやって切るの?
中野:撮影したい日付と場所(緯度と経度)を社内のシステムに要求すると、その指令は地上局を通じて電波で衛星に届きます。指令を受けた衛星は、目的地点をカメラが撮影できるように向きを変え、指令通りに撮影します。この過程はすべて自動化されています。
お客様の要望に応じていつでも指令を出せますが、撮影のタイミングは、世界中どこであってもその地域の午前10時から午前11時の間です。これは衛星が周回する軌道に理由があります。
衛星のデジタルカメラ(光学センサー)による撮影は、太陽光に影響を受けます。そのため、光の当たり方が一年を通して一定に保つことができ、さらに地表の影が短い午前中のこの時間帯に撮影可能な軌道を、GRUS-1は選んでいます。ほぼ同じ時間や光の条件で同じ場所を撮影できるという特徴は、時系列や地域間の比較にも活用されています。
丹波:衛星は遠くのものを広く細かく撮影するため、ピントの微調整も欠かせません。ピントは、デジタルカメラで目の役割を果たすとされるイメージセンサーの位置で調節します。イメージセンサーの位置は衛星の打ち上げ前の試験でできる限り決めていますが、宇宙空間の温度などの微妙な環境変化でピント位置が簡単にずれてしまうので、打ち上げ後に実際の撮影画像を見てから1ミリよりも小さいマイクロ単位で再調整します。
いかに人の目で見た通りに画像を撮影できるか。その性能を高めることに注力しています。
(右)2021年に打ち上げられたGRUS-1の機体
ー 衛星画像から何が見えますか?
丹波:航空機やドローンと比べ、衛星は飛んでいる高度が高い分、一度に広い範囲を見ることができます。また航空機やドローンと違って上空を止まることなく飛び続けるので、コストや時間を節約し、頻度高く同じ地点を定期的に観測できることが魅力です。宇宙空間の衛星は、航空機のように各国の領空制約を受けることもありません。
中野:ここで、衛星画像を一つ紹介させてください。2021年にGRUS-1が撮影した南極の画像で、中央に南極観測船「しらせ」が写っています。中央の物体の影は船の形になっており、氷を砕いて進んだ跡が見えます。日本からはるか遠く、人が住んでいない場所に人の活動の姿が見えるこの画像は、地球のダイナミックさを伝えています。
衛星画像の持つ力はこれだけではありません。
私が今の仕事に興味を持ったきっかけは、学生の頃、衛星画像が東日本大震災の被害把握に役立ったことを知ったことでした。現地に行かなくても地球上のあらゆる地点の今を見て、社会の役に立てられるという価値を、多くの方々にも感じてもらいたいですね。
雪の塊と思われるマシュマロのような物体は、観測船の何倍も大きい
関連記事はこちら:
小型衛星はどれくらい小さいの? 分かるようで分からないを解説します #01