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小型衛星はどれくらい小さいの? 分かるようで分からないを解説します #01

FEB - 04 - 2026

INTERVIEW

小型衛星の開発と運用をベースに、アクセルスペースは宇宙があらゆる人に当たり前に使われる社会を目指して事業を展開しています。みなさんは「小型衛星」と聞いて何をイメージするでしょうか。衛星開発に日々取り組む私たちにとって当たり前のことも、多くの人にとってはそうではないのでは?そのような疑問から出発した今回の企画では、「分かるようで分からない小型衛星」について解説します。アクセルスペースの小型衛星を今よりもっと身近に感じてもらえますように―。

「小型衛星はどれくらい小さいの?」が第1回のテーマです。

アクセルスペースが創業した2008年、人工衛星と言えば重さ1トン以上の大型衛星でした。高額な費用と長期間の開発のために政府や一部の大企業による開発が主だった時代から、当社は世界に先駆けて、低コストで短期間に開発ができる小型衛星の実用化に取り組んできました。これまでに11機の小型衛星を開発し、宇宙になじみのなかった民間企業が自社衛星を保有したり、衛星データを利用したりするような、新たな未来を創造しています。

10年以上にわたって当社の小型衛星の設計開発に携わり、現場をリードしてきたエンジニアの倉田さんに話を聞きました。

アクセルスペースが開発した小型衛星の実寸大模型と倉田さん

ー 小型衛星はどれくらい小さいの?

倉田:アクセルスペースが注力する小型衛星は重さ100〜150kgです。現在、宇宙空間で運用している地球観測衛星「GRUS-1(グルースワン)」は約100kgで、縦横いずれも60㎝、高さ80㎝。2025年6月打ち上げの性能検証機「GRUS-3α(グルーススリーアルファ)」は約150kgで、縦96㎝、横78㎝、高さ126㎝です。

明確な定義はありませんが、一般的に50〜500kgを小型衛星と呼ぶことが多いです。もともと数トン級の大型が主流だった衛星を小型化する技術は、ここ20年で世界的に進んできました。これは、大型よりも小型の方が優れているということではありません。実際に当社が初めて開発した衛星「WNISAT-1(ダブリューエヌアイサットワン)」は10kgで一辺約30cmの立方体、その次の「ほどよし1号機」は60kgで一辺約50cmの立方体でした。

そして最近開発した衛星は前出の通りで、小型衛星という枠の中で、時代を追うごとに少しずつ大きくなっています。

この背景には、衛星が大きいほど物理的な容量と使用できる電力量が増え、高速通信が可能な大きなアンテナや、品質の良い画像を撮影するための口径の大きい望遠鏡など、より高性能な機器を搭載できるということがあります。

アクセルスペースは、衛星そのものの機能向上や高度な用途への対応を進め、必要に応じて衛星のサイズを大きくしてきました。当社の小型衛星の変遷は、利用者が求める性能レベルを満たしつつ、開発期間やコストとのバランスが取れる最適なサイズを考えてきた結果なのです。

アクセルスペースが開発した衛星の大きさ比較

ー 小さいことの利点は?

倉田:衛星はコンピューター、姿勢制御のセンサー(姿勢を知る機器)やアクチュエーター(姿勢を動かす機器)、推進器、通信アンテナ、太陽電池やバッテリーなどで構成されています。衛星のサイズによる構成の違いはありませんが、小型衛星は大型衛星に比べて使用する機器や部品が小さく、量も少なくなります。そのため、打ち上げまでに実施しなければならない試験項目も減り、これにより開発期間とコストを抑えられます。

大型衛星の場合、太陽電池パドルが羽根のように広がっているイメージがあるかもしれません。しかし、当社の小型衛星GRUS-1やGRUS-3αにはパドルはありません。箱型の構造で、4つの側面にソーラーパネルをぎっしりと貼り付けています。

宇宙では常に4面のうち2面のソーラーパネルが太陽に向いて発電しており、衛星の運用に必要な電力量を賄っています。展開式の太陽電池パドルは大量の発電ができるものの、製造コストがかかり、打ち上げ後に開かないというトラブルの可能性もあります。当社は開発から打上げまで1年以内を目指しており、このようなシンプルな設計を選択できるのは、小型だからこそと言えます。

また、小型衛星はロケット1機に複数機を相乗りさせて打ち上げることもできます。実際にGRUS-3αは、他社の衛星を含む70ものペイロード(積載物)とともに宇宙に運ばれました。ロケットへの相乗りによって打ち上げ機会を多く得られる点も小型衛星のメリットです。

GRUS-3αを打ち上げたロケット(左)とロケットのフェアリング内(右) ©SpaceX
赤い丸で囲ったところにGRUS-3αが搭載されている

ー なぜ小型衛星が可能になったの?

倉田:理由の一つは、世の中の技術の進歩を衛星に取り入れてきたからです。

当社の小型衛星には、スマートフォン、自動車、パソコン、カメラなど、私たちの身の回りにあるさまざまな製品に搭載されている電子部品を使っています。最先端の半導体技術などは、衛星の小型化と高性能化を同時に実現することに役立っています。

宇宙用途でなく一般向けの電子機器に使われる、このような「民生部品」は、市場で先行して大量生産され、種類が多くあり、安価です。ただし、そのまま衛星に利用することはできません。課題は宇宙環境の過酷さです。

例えば、宇宙には地上の100倍以上の放射線があります。放射線に耐性がない電子部品は、いきなり電源が落ちるような誤作動が起きたり、最悪の場合は永久故障したりします。アクセルスペースは創業当時から、放射線に耐えられる民生部品を見極める検査方法やノウハウを蓄積しています。

GRUS-1とアクセルスペースのメンバー。倉田さんは左端(2018年撮影)

ー 宇宙ならではのものづくりとは?

倉田:宇宙には風雨も音もなく真空で、衛星にとっては穏やかな環境です。しかし、そこに到達するまでのロケット内は最も過酷な環境になります。

エンジン噴射時の振動、重力に逆らって急激に加速する時の荷重、宇宙空間でロケットから切り離される時の衝撃は非常に大きいものです。これらに耐えられる強度を備えた衛星に仕上げるために、設計段階から何度も試験を繰り返しています。

衛星に望遠鏡などの機器を載せることも、衛星そのものをロケットに載せることも、引っ越しトラックに荷物を積んで運ぶような気軽さはまだありません。それぞれの個体に合わせた設計が必要なため、開発に時間がかかる原因にもなっています。宇宙のものづくりを他の産業のスピード感に合わせていくことは、私たちエンジニアにとっての挑戦です。

衛星は一度打ち上げられると、エンジニアはもう二度と直接触ることはできません。運用を終えた後には大気圏に突入して燃え尽きてしまいます。宇宙で起こりうることをいかに先回りして設計するかは、難しさでもありおもしろさでもあります。私たちは衛星に、運用にミスがあっても故障しない、一部の機器が故障したり開発時と想定外の状況になったりしても運用が続けられる、というような多くの工夫を盛り込んでいます。

行ったことのない宇宙を思い描きながら一つひとつ形にしてきた小型衛星が、実際の宇宙で想定通りに動いている。そのことに、私たちは日々励まされています。

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